awk終の住処

電脳小物をこよなく愛して

干支を前に

今朝明け方、奥さんと子供達が飼っていたジャンガリアンハムスター(ブルーサファイア:1歳7ヶ月)「たまり」の命の灯火が突然、本当に突然に吹き消されてしまいました。家人に愛され、恐らく今まで飼ったハムスターの中で一番の愛嬌者であった小さな命に降りかかった出来事は、家人のだれにも非常にショッキングなことでした。

ご存知かもしれませんが、ジャンガリアンハムスターの寿命は約2年といわれてます。我が家で今ま飼ったハムスター達のほとんどがその前後で星になりましたが、その前には必ず動作が少しずつ鈍くなってきたりエサを食べなくなったりと何らかの前兆がありました。彼女にはそれがありませんでした。確かに最近少し痩せてきていたのが気にはなってましたが、エサもきちんと食べるし元気そうだから大丈夫だろうと、我が家での平均寿命から勝手にまだそんなことはあるまいと楽観視してました。
そんな勝手な思い込みを嘲笑うが如く、手の平の上の冷たくなった骸はいくら摩ってやっても、二度とその愛された数々の奇行を見せてくれることはありません。

奇行というとなんだろうと思われるかもしれませんが、「たまり」が愛された理由のひとつに、今まで飼ったハムスター達の誰もがしなかった特異な行動があります。中でも彼女が大好きだった回し車の上に乗って走る”外走り”は本当に不思議な光景でした。


ハムスターは小さな身体とは裏腹に一日の行動距離が10kmを超えるそうで、狭い飼育用のケージの中で運動不足にならないように回し車を入れますが、彼らは誰に教わることもなく回し車の中を走り始めます。本能といおうか、直感的に走るならこれと分かるのでしょうね。でも普通走るのは回し車の内側です。

「たまり」も最初は回し車を普通に走っているだけでした。今まで飼ったどのハムスターよりも頻繁に走っている(爆走状態です)姿を見かけましたが、その時には回し車が大好きなんだと感じたわけでもなく、ずいぶん活発な子だなという程度の感想に過ぎませんでした。ところがある日、この見方を一変させる光景を目撃することになりました。
その日いつものように爆走を始めた彼女のケージからは絶え間なく轟音が響いていましたが、暫くするとなんだか回し車初めて走った頃のような、たどたどしい音が聞こえてきたのです。怪訝に思いケージを覗きこんだわたしの目に飛び込んできたのは驚きの一言では片付けられないものでした。なんと彼女は回し車の外側の頂点を走っていたのです。誰もそんなことしろと教えていませんし、今までどのハムスターもこんなことしたことはありません。でも彼女は必死にバランスをとりながら走り続けていました。速く走り過ぎては頭から枯れ草を敷いてある床にダイブし、また懲りずに走り始めるのです。
単に運動不足を解消するだけなら回し車の内側を爆走したほうが断然合理的です。現にその後も内側を普通に走ってましたし、回し車に飽きたということではなさそうでした。しかし”外走り”を度々見かけるようになり、実はこの”外走り”を気に入っているのでは?と思うようになりました。

恐らくは最初は、2階のスペースから下に降りようとして足を掛けたら思いがけず回し車が回せるということに気付いたのでしょう。狭いケージの中のことですし、他の子達も同じ経験はしたでしょうがこんな行動を起こした子は一匹としていなかったというのに。不安定で大変な”外走り”をあえて何度もする以上は、面白いと感じなければ続けることはないでしょう。
こんな小さな生き物だって『好き』と思うことだってあるんだと、不思議ではあるものの妙に納得させられてしまいました。それからは「たまり」は回し車が好きなんだという目で見るようになりました。回し車を爆走してはケージの前まで来て後ろ足立ちしては満足げです。こうなると回し車から聞こえてくる爆音もほほえましく思えてくるから不思議です。


でも、。
ケージを脱走しながら家人の目の前を自慢げに横切ってみせる、エサを要求するのに砂箱(トイレ)の上に腰掛けながら金網を齧りつづける、等々数え上げればきりが無いほど今までのどのハムスターたちが見せなかった行動で家人に愛し続けられた「たまり」。短い間だったけれど、ありがとうね。

一昨日もいつものように”外走り”を披露していたというのに、なぜ突然に。
来年の干支、ネズミを前にして。